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トンコとオレの冒険 第二話 鬼きりの太刀2

歓迎会は近くの居酒屋で行われた。
最初のうちこそ皆は神妙にしていたが、
宴会も中盤になるとあちこちに車座ができていた。
オレはなんとなく一人で飲んでいたが、
そこへかすかな風と甘い香りがオレの鼻をくすぐった。
「ここ、座ってよろしいかしら?」
珠子さんだった。オレは胸がキュンとなり、あわてて座り直した。
「ど、どうぞ。」
「あら、そんなに緊張しなくたって。」
珠子さんは、ぞくっとするような笑みを浮かべながら、そういった。
それからオレと珠子さんは宴会が終わるまで話し込んだ。
一次会が終わって、オレは一人で電車で帰ろうとして、改札を通ろうとした時だった。聞き覚えのあり香りがオレを振り向かせた。
黒くシルエットになった女性はブローチだけが光っていた。
「あたしよ。珠子。もう少し付き合って下さらない?」 
オレは少し驚いたが、別に不思議とも思わず、
「あ、良くわかったね。も少し飲む?」
「ええ、もう少しお話しがしたいの。」
珠子は大きな瞳で康介を見つめながらそう言うと、微かに口許を上げた。
オレ達は、この駅の近くにあるバーで話すことにした。
「珠子さん、そのブローチ良いね。」 
「そうよ。これ、スワロフスキーの蜘蛛の形をしたブローチなのよ。」
オレはそのブローチの光に軽くめまいを覚え、少し意識が遠のいた。
「さあもっと見るのよ康介さん、ふふふ。」 
オレはどんどん意識が遠くなり、居眠りをしたようだった。
「もしもし、お連れの方はお帰りになりました。」
と店のマスターに起こされた。
かたわらにメモ紙があり、それには、
「今日はどうもありがとう。また飲みましょう。珠子」
と書いてあった。オレはすっかり珠子さんに夢中になった。

続く

by caymmi1 | 2008-05-04 22:49 | お話、小説  

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