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お話。トンコとおれの冒険 第一話 しゃべる車

さて、皆さんおまたせしました。
お話、「トンコとおれの冒険」第一話を始めたいと思います。


おれ、29歳。名前は康介。東京は中央線沿いに住んでいる。
仕事は部品メーカーの技術営業をやっていて、
毎日出張が多い仕事だ。家族はアパートで内緒で飼っている、
というより同居人のみーちゃん。あわせて一人と一匹だ。
事務所は、「カチョー」とよばれる古株のOLの、としえさん、
新人のななみさん、ベテラン技術社員の安岡さん、(やっさんで通っている)
それにほんとの「課長」とおれの5人だ。
世間的にはまあまあの会社なんだが、
この事務所は昭和20年代に建てられた古い建物だ。
夏はなんとかオンボロのエアコンを入れてしのいでいるけど
冬は石油ストーブで暖房している、今時めずらしい会社だ。
新人のななみさん(ななちゃん)なんかは石油ストーブを見て
どうやって使うかと質問したぐらいだ。
なんでも石油ストーブは使ったことがなかったらしい。
さてさて、あの不思議な車との出会いを話さなきゃ。
そう、あれは今年の夏の終わりだった。
「カチョー」のとしえさんが、
「こーちゃん、(おれはこう呼ばれている)会社の車、こわれちゃったんで、
当分のあいだレンタカー借りといたから。急だったものだからすこし小さいけどがまん
してね。」
「はーいわかりました。」
「カチョー」は滅多にこないホントの課長よりてきぱき仕事をこなす人だ。
逆らえない。
「あ、それからこーちゃん。その車少しヘンなところがあるって。なんでも
ナビゲーションがおかしいらしいって。」
「りょうかい。それじゃあ行ってきまーす。」
とレンタカーの鍵を受け取ると、駐車場にむかった。
事務所の裏にある社員専用の駐車場に、
水色のちいさい車があった。
荷物を積み、ナビゲーションに住所をセットすると、
若い女性の声で、
「これから音声ガイドを始めます。安全運転で走行をお願いします。」
「およそ300メーター先を右に行ってください」
あれれ?この会社から国道の出口は30メーターぐらいしかないよ?
それに右じゃなく左だし。そう思ったおれはナビゲーションの地図を
みて確かめ、音声ガイドの指示ではなく地図をみて運転することにした。
ナビゲーションの音声はあいかわらずとんちんかんな案内をしている。
30分も話したころだろうか、ナビゲーションは静かになった。
そしてそのあと音声ガイドが「ちょっと、ねえ止まって!」
と言ったから、おれは思わず急ブレーキをかけた。
ガイドは続けて、
「ねえ!さっきからどうしてあたしを無視するのよ!」
おれはこりゃいたずらかもしれないと思い、
車を止めてナビゲーションの電源を切ろうと思い工具を手にしたら、
そのとたん、
「やめて!話をきいて!」
との声がした。
さあいよいよおれも気がヘンになったか?自分で気付かず、
声にだして言ってしまった。
「違うの!あなたはヘンじゃあないの。」
しゃ、しゃべった!車がしゃべった!
おちつけ!おれ。おちつくんだ!
なんか胸がドキドキする。
深呼吸しながら、おれはこいつが宇宙人じゃないかと思った。
おそるおそる
「あのうあな、あなたのお名前は?」
なんてとんちんかんな質問をしてしまった。
以外にはっきり
「あたしはトンコ。あなたは?」
これがおれとトンコの出会いだった。

つづく。

by caymmi1 | 2008-02-02 14:54 | お話、小説  

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