トンコとおれの冒険 第二話 薔薇と十字架 6
2010年 10月 22日
さて、ずいぶんとご無沙汰しましたが、トンコ〜のお話の続きです。
前回、理絵は「南坊」という得体の知れない人物から茶事の招待を受けてしまいます。
なにか心を引かれてしまった理絵は茶事に行く洋服選びをしています。
翌日、仕事を早くきりあげるとマンションへ帰った。
茶事!なにを着ていこうかな?
クローゼットの前でしばし迷ったが、プリーツのついた白いブラウスとグレーの
パンツスーツを選んだ。
地味かなあ?でも派手なものは合わなそうだし。ま、これでいいか。
でもすこしさびしいな。と感じつつなにげなしにアクセサリーボックスを開けると、
蝶の形をしたアクセサリーが「私を使って」といわんばかりに目に入って来た。
それは本物のモルフォ蝶を使い銀で縁取りをしたものだった。
理絵はそれを皮紐につけてチョーカーにした。
支度が済むと少し緊張が解けたのか理絵は眠くなってしまい、
ベッドに腰掛けるとそのまま居眠りをしてしまった。
「もうし、花蝶どの。もうし。」
すこしくぐもった女性の声で理絵は起きた。
ベッドの脇に小袖を着た若い女性が自分を呼んでいるのがわかった。
「花蝶どの。わがあるじからの使いでございます。」
「あ、ごめんなさい私寝ちゃってた。すぐ支度しますね。」
すこしびっくりしたが、この女の人がどこから来たか?ということはあまり
理絵は不思議には思わなかった。
「ところでこれからどちらへ伺うの?」と理絵が女性に聞いた。
「案じる事はございませぬ。この鏡からわがあるじの屋敷へ案内いたします。」
と案内の女性は化粧台の鏡に向かって歩き出した。
理絵は彼女の後を着いて行き、鏡に入った。
薄暗い和室に理絵は立っていた。案内の女性の姿はどこにもなかった。
「良く参られた。花蝶どの。本来であれば吾が茶室へ案内するのだが、あいにくと
修理中での。して実は引き合わせたいお方がいるのじゃ。」
先日、吉祥寺であった男だった。しかし今は見違えるように立派な着物を着ていた。
そして傍らには西洋人が質素な法服の身なりで正座していた。
「このかたはうるがんばてれん様じゃ。どうしてもそなたに会いたいとのことじゃ。
さて花蝶どの、名乗りがおそくなってしまったが、今は南坊と申すが、またの名を
高山右近と申す男じゃ。非礼をお詫びする。」
と男はそういうと西洋人のほうへ目を向けた。
法服を着た西洋人は微笑みをうかべていった。
「私はオルガンティノと申しますが、まわりでは、うるがんばてれんと言われています。
花蝶どのはこんなに美しい人とは知りませんでした。あなたに会えてとてもうれしい。」
理絵は思わずくすっと笑った。この人はどうもラテン系みたいだなと思った。
「実はあなたにお願いがあります。少したいへんなことです。」
そのオルガンティノと呼ばれる男は少し顔を曇らせて言った。
続く
前回、理絵は「南坊」という得体の知れない人物から茶事の招待を受けてしまいます。
なにか心を引かれてしまった理絵は茶事に行く洋服選びをしています。
翌日、仕事を早くきりあげるとマンションへ帰った。
茶事!なにを着ていこうかな?
クローゼットの前でしばし迷ったが、プリーツのついた白いブラウスとグレーの
パンツスーツを選んだ。
地味かなあ?でも派手なものは合わなそうだし。ま、これでいいか。
でもすこしさびしいな。と感じつつなにげなしにアクセサリーボックスを開けると、
蝶の形をしたアクセサリーが「私を使って」といわんばかりに目に入って来た。
それは本物のモルフォ蝶を使い銀で縁取りをしたものだった。
理絵はそれを皮紐につけてチョーカーにした。
支度が済むと少し緊張が解けたのか理絵は眠くなってしまい、
ベッドに腰掛けるとそのまま居眠りをしてしまった。
「もうし、花蝶どの。もうし。」
すこしくぐもった女性の声で理絵は起きた。
ベッドの脇に小袖を着た若い女性が自分を呼んでいるのがわかった。
「花蝶どの。わがあるじからの使いでございます。」
「あ、ごめんなさい私寝ちゃってた。すぐ支度しますね。」
すこしびっくりしたが、この女の人がどこから来たか?ということはあまり
理絵は不思議には思わなかった。
「ところでこれからどちらへ伺うの?」と理絵が女性に聞いた。
「案じる事はございませぬ。この鏡からわがあるじの屋敷へ案内いたします。」
と案内の女性は化粧台の鏡に向かって歩き出した。
理絵は彼女の後を着いて行き、鏡に入った。
薄暗い和室に理絵は立っていた。案内の女性の姿はどこにもなかった。
「良く参られた。花蝶どの。本来であれば吾が茶室へ案内するのだが、あいにくと
修理中での。して実は引き合わせたいお方がいるのじゃ。」
先日、吉祥寺であった男だった。しかし今は見違えるように立派な着物を着ていた。
そして傍らには西洋人が質素な法服の身なりで正座していた。
「このかたはうるがんばてれん様じゃ。どうしてもそなたに会いたいとのことじゃ。
さて花蝶どの、名乗りがおそくなってしまったが、今は南坊と申すが、またの名を
高山右近と申す男じゃ。非礼をお詫びする。」
と男はそういうと西洋人のほうへ目を向けた。
法服を着た西洋人は微笑みをうかべていった。
「私はオルガンティノと申しますが、まわりでは、うるがんばてれんと言われています。
花蝶どのはこんなに美しい人とは知りませんでした。あなたに会えてとてもうれしい。」
理絵は思わずくすっと笑った。この人はどうもラテン系みたいだなと思った。
「実はあなたにお願いがあります。少したいへんなことです。」
そのオルガンティノと呼ばれる男は少し顔を曇らせて言った。
続く
by caymmi1 | 2010-10-22 22:06 | お話、小説