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トンコと俺の冒険 第二話 薔薇と十字架 4

さて、久しぶりにお話の続きです。

前回は「カチョー」の理絵は、ななみちゃんと珠子さんと、薔薇のついた十字架のことで、
話し合いをしていましたが、途中で「慶彦」と会ってしまいます。そして・・・

涙をぬぐい、ななみちゃんと珠子さんのいる店に急いだ。
サンロードにつくと、普段は賑わっている筈のアーケードはひっそりとしていた。
不安を感じ、携帯電話をとりだしたが、「圏外」の表示だった。

「何よこれ!」
理絵は店に急いだ。しかし店の照明はついておらず、人の気配は
感じられなかった。
とりあえず帰ろうと思いその場を離れようとしたその時、
男の低いが良く通る声が聞こえた。

「またれよ!しばしの間、話しをせぬか?」
店のドアをあけると、男は、ぼうっとした光をしたものを持ち、
今しがたななみちゃんや珠子さんが座っていた席にいた。
男は口ひげをたくわえ、柔和な顔をしていたが、目には力があった。

緊張した理絵の口からは、

「どなた?」
と問いかけるのが精一杯だった。

「これは無礼であった。吾はジュスト、ドン・ジュストと申す。」
「正義?」
理絵は反射的にそう答えたのだが、なぜ口をついて出たのはわからなかった。

「安堵した。実はな、それは合言葉なのだ。南蛮語を分かる本邦人はそうはおるまいからの。」
男は続けて言った。

「このクルスはお前様のものじゃな?」
男はテーブルの脇においた薔薇と十字架のついたネックレスをとりあげた。
そして慶彦が自分にくれたネックレスを見た。それは今まで気付かなかったのだが、
まさしく「ロザリオ」だった。

「ええ、そうです。」

男はそのロザリオをためつすがめつ見て、

「これは囮じゃ。失礼ながらお前様が持っていると身が危うい。吾が預かろう。」
「あのう、伺いたいのですが、わたしとあなたは何か関係があるのですか?」

男は、しばし考えていたが、やがて
「お前様は自分のご先祖様を知っておるかの?」

理絵は思い出すように言った。
「ええと、おじいちゃんは江戸っ子だったけど、そのまたおじいちゃんはコウシャクっていうのかしら、
偉い人だったという話を聞きました。」

「それは家譜でも見ぬと詳しくはわからぬが、このぱあどれ様より拝領したクルスはたしかじゃ。
それが光のがなによりの証拠じゃ。」

さらに男はこういった。

「さて、今宵も更けた。吾は南坊と申しての、お前様を茶に招待しよう。さて重ね重ね無礼じゃが、
お前様の名はなんと申すのじゃ?」

「理恵、理屈の理に絵と書きます。それで理絵」

「りえか、理に絵か。して通名はいかがした?」

「あ、あだ名ですね。ではカチョーと呼んでください。」

「しかと承知した。では冥界の茶会に招待しよう。後に使いの者をやろう。では、いずれ。」

と言い残し、ロザリオの光が消えあたりは真っ暗になった。理絵は一瞬気が遠くなった。
気が付いてみると、

「あれカチョー!いつの間に戻っていたの?」
とななみちゃんの声で理絵は我に帰った。


トンコと俺の冒険 第二話 薔薇と十字架 4_f0107517_1704457.jpg


さて、ジュストとは何者でしょうか?ヒントの画像です。

by caymmi1 | 2010-01-13 11:07 | お話、小説  

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