さて、ここは福井、黒龍神社。
トンコは意識を失っていたが、
女性の良く通る声で気がついた。
「姫よ姫、起きなさい。」
トンコが目をさますと、まばゆい光につつまれた
女の人の姿があらわれた。
「あなたはだれ?」
「わらわは愛姫じゃ。陸奥守政宗の正室じゃ。」
「あの仙台の伊達さん?」
「ほっほっほ。面白いの。そなたは私の娘、いろは姫の
生まれ変わりなのです。」
「わたしが?どうして?」
「くわしいことは改めて答えましょう。それより妙法院の言うことを
聞くふりをしなさい。呪文はわらわが解いておいたのでの。
そなたは奴に操られそうになったのじゃ。決して悪いようにはせぬ。」
といって姿はたちまち消えてしまった。
まもなく地の底を這うような気味の悪い声が聞こえてきた。
トンコはぞっとしながらも操られるふりをした。
オレ達は宮城県の大崎市は旧古川市にある電子部品メーカー
で仕事を済ますと、田尻町にある大崎八幡神社に向かった。
オレ達は人気のない社殿についた。
玉はたちまち竜の姿の辰治さんと武者姿の多田満仲さんがあらわれた。
満仲さんは、
「この神社はわが息子の頼義が建てた神社での、ここいらは
遠田郡八幡村といっての、奥州管領の大崎氏の城があったあたりなんじゃ。」
と説明してくれた。続けて、
「さてと、わが息子出ませい!」
と叫ぶと社殿の奥に、光るものが二つ現れた。
「父上様お久しゅうございまする。」
「祖父様お久しぶりにてござります。」
2つのひかるものがそれぞれ答えた。
「お前たち、これより九つの頭と九つの尻尾をもつ九頭竜が
来るはずじゃ。近づいたらわしに知らせよ。」
「ははっ。かしこまりました。」
「うむ頼んだぞ。」
「いよっ、満っちゃんかっこ良いね!」
と辰治さん。
「へーえ満仲さんてえらいんだねえ。ところでここは息子さんが建てたの?」
「少し前は多田の満仲武士のはじまり。などと言っておったがのう。
わしは摂津源氏の祖なのだよ。そして息子が頼義、孫が八幡太郎義家じゃ。知らんかの?」
「あいにく歴史は大嫌いだったんだ。」
とオレ。
「ささここはわしの息子にまかせて、湯に行こうではないか。
のう辰っちゃん。」
「あいよ満っちゃん、康介さん行きましょうよ。」
「いいけど良いのかなあ。」
「大丈夫、大丈夫。」
「ところで満仲さんに聞くけど、どうして刀がここにあるってわかるの?」
「うむ良いことを聞いてくれた。鬼切の太刀ほどの力を持った武具は、
たいていゆかりの神社におくものじゃ。
とくに鬼切の太刀は源氏ゆかりの刀じゃから、同じく源氏ゆかりの
神社であるここに来るのは道理じゃよ。」
「そういうことだったのか。では行きましょうか。」
オレ達は鬼首温泉に向かった。
続く
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by caymmi1 | 2008-03-28 11:46 | お話、小説

春の鎌倉

今日は、思い立って鎌倉は長谷寺に行ってきました。
桜はまだですが、色々な花が咲いています。

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観光客が見上げています。
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長谷寺もすっかり春です。
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長谷寺の本堂です。
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鎌倉が見渡せます。
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長谷寺は有名な大仏の近くにあり、四季の花がとりどりに咲いています。
機会があればぜひおでかけ下さい。
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by caymmi1 | 2008-03-23 17:59 | 花 風景 旅 美術

さてオレ達は辰治さん(玉になっている)と、
トンコと満仲さんになったわけだが、満仲さんは
そのままの格好では目立ちすぎるので、
辰治さんの玉に居候させてもらうことになった。
問題はトンコだった。
エンジンはかかるがまったく反応がないのだ。
まるで魂が抜けてしまったようだった。
辰治さんと満仲さんは話し合っているようだったが、
満仲さんが、
「やはり、あの義昭という坊主が魂を吸い取ったとしか思えぬよ。
そこでだ、奴が鬼切の太刀を奪いにくるのを待ち伏せして、
姫の魂を取り返すのが良い手立てだと思うのだが。」
「うん、それしかないな。ところでさっきから気になっていたのだけれど
姫ってトンコのこと?」
「うむ。それについては改めて話そうぞ。」
「景気よく押し出そうじゃねえかい。ねえ、それにそのなんだ宮城には
たくさんの良い温泉があるっていうじゃあありませんかい。満っちゃんも
いこうよ。」
「満ちゃんとはわしのことか?ははは、まるで朋輩じゃの。それでは
辰っつあんとよばせてもらうぞ。」
「がってんでい。」
満仲さんと辰治さんは仲よくなっている。
さて場面が変わってここは福井の黒竜神社。
妙法院は護摩をたきながら呪文を唱えていた。
青白くしもぶくれした顔を炎が照らしている。妖しげに両目が
光っていた。
「ふふふ。これでこのわしも将軍になれるわ。このような坊主
姿にはもうあきあきじゃ。」
とぶつぶつ独り言をすると右手に人形の紙を持ち、
それに語りかけた。
「登紀子よ、いや姫よ、わしがわかるか?」
「ううう、だれ?私を呼ぶのは?」
「わしよ。妙法院よ。いまからそなたはわしの言うままになるのだ。」
「はい妙法院さま。」
「そなたはここの九頭竜に乗り移り、奥州に行くのだ。」
「そして鬼切の太刀を探してくるのだ。わかったな。」
「わかりました。」
と妙法院の手から光る物がすーっとでて闇のかなたへ
飛んでいった。
「ははははははは。はは。ははははは。」
妙法院の笑い声が響きわたった。
そしてその姿をじっと見ている者がいた。
北畠親房だった。
続く
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by caymmi1 | 2008-03-19 16:19 | お話、小説

鉄格子に捕らわれてしまったオレと辰治さんは、
水の流れる音を耳にした。
「いけねえ、水だよ!」
オレは焦った。水がかさを増してきている。
オレ達に逃れるすべはない。
「辰治さん!今、竜の格好だけど、溺れるってことはないの?」
「情けねえが、オレ達も呼吸ができねえと死んじまうんだよ!」
ふとオレのポケットに固いものが触れた。
そうだ!
「辰治さん!竜って雷を落とすんだよね!」
「あ、そうだった。ただね、うんとでかい奴はだめだよ。
ありゃあ竜神様が起こすんだから。」
「十分だよ辰治さん!ところで手というか前足から雷を起こすの?」
「いえね、しっぽなんで。」
「じゃあこの線に雷を落としてみて!」
「ようがす。」
オレは仕事で使うコンパクトな発信機から、リチウムイオン電池を
はずし、リード線をつけ、鉄格子の隙間に押し込んだ。
そして辰治さんのしっぽにリード線をあてた。
「辰治さん、雷を起こしてみて!」
「ひい、ふう、のみっと!」
辰治さんは一瞬青白い光に包まれたかと思うと、
電池が爆発した。
数センチの隙間だったが鉄格子が開いた。
すかさずオレが押し広げながら、辰治さんを逃がし、
オレも外にでた。
そして水浸しになったトンコとオレ達を辰治さんが載せ、
元の場所に戻った。
やれやれと思う暇もなく、
「お前たちは何者だ!」
という野太い声が聞こえ、振り返ると、
今にも斬りかかりそうに刀に手を掛けた武士が眼光鋭く
見据えている。
オレ達は気迫に押され、何もすることができなかった。
武士はしばらくにらんでいたが、ふっと顔を和らげ
温和な表情になった。
「いやこれは無礼をいたしたな。人違いだったようだ。毒気は
感じぬわ。わしは摂津守多田の満仲じゃ。」
オレ達は「多田の満仲」と名乗る人物にいままでの事を話した。
ひげづらの満仲さんはじっと聞いていたが、
「その九頭竜を退治して熊野権現の宮司に鎮めてもらったのはわし
なのだよ。その登紀子姫、トンコ姫か。助けられるかも知れぬよ。
さっきお前様が語った妙法院という呪法を使いの坊主と武士は
おそらくわしが追っている者ではないかと思う。北畠と義昭という名前だがな。」
「名前は忘れちゃったんですが確かそんな名前でしたね。」
「奴らを追っているのはな、実はある刀を探しておるのだよ。
「髯切の太刀また鬼切の太刀といってな、源氏の長者に与えられる
ものでの、新田義貞が持っていたのだが、斯波に討たれた時に
奥州管領の大崎氏の所にわたったというのだ。奴らは必ずその刀
を奪い、その太刀の霊力で日本を滅ぼそうとするだろう。」
こうなったらオレは腹をくくった。
「ひよっとするとこちら側の世界では宮城県の大崎市ですか?」
「うむあるとすれば八幡さまに奉納されているはず。」
「わかりました。宮城県に行きましょう。ところでトンコはそちらに
行くんでしょうか?」
「おお、姫かトンコ姫じゃな?うむそちらにまずまちがいなく行く
はずじゃ。」
オレ達は宮城県に行くことになった。
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by caymmi1 | 2008-03-18 17:17 | お話、小説

鏡の世界を通りぬけると、
建物のなかのようだった。
一画だけがぼうっとろうそくのような明かりの
なかに人の顔が映しだされている。
辰治さんが、
「おかしいな?なにかが変だ。竜神様がいねえ。」
オレは怖かったが
「とにかくあそこにいってみよう。」
トンコはどうやら怖がっているようだ。
近づくと、百目ろうそくの光にてらされ、坊さんと
武士の姿があった。二人ともこちらを向いている。
やにわに坊さんが、
「よう参った。登紀子。」
トンコは固まってしまった。
「なぜ本名を知っている?あんたはだれだ!」
オレはつい怒鳴ってしまった。
「非礼な!げいかをなんと心得る!」
「まあ良い。愚僧は妙法院。大覚寺義昭といえばわかるかな?」
「なんでえうろんな奴め、竜神さまはどこへいったんでえ!」
辰治さんは威勢が良い。
「まあ話を聞け。」
となりの武士がしずかに言った。
「私は北畠親房だ。ところでお前たちは三種の神器というものを
知っておるかの?」
「なんでえ、そりゃ天皇陛下が持っているんだろう?」
「ははは。いまのそちたちの天皇の三種の神器は真っ赤な
偽物だ。足利の傀儡なのだよ。われらは後村上天皇を奉じた
南朝いや吉野朝のものだ。」
「しかし、なぜオレ達が関係があるんだ?」
「愚僧が答えよう。この黒龍神社はだな、もともと南朝の使い神で
九頭竜といってな九つの頭と九つの尻尾をもつ竜を祭ってあるのだが
これが足利の妨害にあって使えないのだ。これを使うには、
熊野権現の宮司である穂積の血を引き、穢れなき少女であることが
条件なのだ。そこで愚僧は呪法を用い、鈴木登紀子の身から魂を奪い
生霊として九頭竜に封じ込めることにしたのだ。」
「私は絶対にいや!」
トンコは強い口調で言った。
「てやんでえだましたな!」
「ははは、威勢が良いな妖かしものめ。それとそこな若者、
よくぞここまで生霊をつれてきたな。礼を言うぞ。だがもうお前たち
は用済みになった。」
と言うが早いか、天井から鉄格子が降りてきて、オレと辰治さんは
閉じ込められてしまった。
「こんちくしょうだしやがれ!」
「なんのためにこんなことをするんだ!」
北畠は
「それでは冥土の土産に教えてやろう。
われらは今は鬼の世界にいるが、いずれ九頭竜を使い現し世の誤りを
正すため、今の日本を滅ぼすのだ。
九頭竜が使えず、やむなく大昔に栄えた竜の骨を用い、
じゃまになる竜神をふうじ込めたわけだ。
そして箱根に先回りしてお前たちが来るようにしむけたのだ。」
「卑怯だ!覚えていやがれ!」
北畠と妙法院は高笑いをし、なにやら呪文を唱えると、
トンコからなにかがヒューッと妙法院の手のなかに吸い込まれていった。
そして闇のなかに消えていった。
続く
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by caymmi1 | 2008-03-13 14:51 | お話、小説

富山での仕事が終わり、
オレ達は国道41号線から高山方面に向かった。
岐阜県に入るころから道は険しくなり、
峡谷に沿って走る。
トンコはこわごわ走っているようだ。
ようやく山道を抜け、飛騨古川あたりで、
休憩をとった。ここいらは「みだらし団子」と「五平餅」が有名で、
屋台が並んでいる。
「みだらし団子」はここいらでは甘くなく、おやつというより軽食
のカテゴリ-らしい。
炭火で醤油のこげる香りがして食欲をそそる。
「ねえ、ひょっとして良いにおいがするんじゃない?」
「早く人間にもどりたいな。」
トンコがつぶやくように言ったがオレは答えられない。
「うん、飛騨古川は町が木の香りがするんだよ。でも今はみだらし団子と
五平餅の香りかな?」
辰治さんは寝ているようだったので、団子は食べず先をいそぐようだった。
高山市を抜け、東海北陸道を白山に向かって走る。
白鳥(しろとり)インタ-から158号線に乗り福井方面に走ると
程なく九頭竜湖が見える。
辰治さんがおきだし、
「うう、力を感じるぜ。ここいらでおろしておくんなさい。」
と辰治さんを見ると、薄く光っているようだった。
湖面が見える場所でオレ達は止まった。
辰治さんは湖面で竜の姿になり、
オレとトンコをしっぽにのせ、
黒龍神社に向かった。
社殿に入り、前回と同じようにご神体の鏡にオレ達は吸い込まれて
いった。
続く
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by caymmi1 | 2008-03-12 12:00 | お話、小説

福井方面への仕事は割りに簡単に決まった。
ちょうど富山と福井に半導体の工場があり、
そこでの仕事があったのだ。
関越道から北陸道に入り、
柏崎を過ぎると日本海沿いに走る。
白馬岳が海につきだすように見え、
山頂からジャンプすれば海に飛び込むように見える。
糸魚川を入ったあたりだろうか、
「ちょいとここらでとめておくんなさい。」
幸い道の駅が近くにあり、
海沿いにある道の駅で少し休憩をとることにした。
辰治さんは「玉」のままどこかへ行ってしまった。
やがて戻ってきた辰治さんの後には、
小石が続いて空を飛んできた。
「辰治さんこれは?」
「これはヒスイの原石でね、ほんとうは勾玉がほしかったんだが、
おいそれと本物の勾玉なんかありゃあしねえ。まあこれでがまん
しとこうってね。」
「でも勾玉が関係あるの?」
「あっしの勘なんですが、勾玉ってよりヒスイが役にたつんじゃあ
ねえかってふんでるんでさあ。」
「そうなんだ。なんか役にたつと良いね。さあそろそろいかなくちゃあ。」
「もうそろそろガソリンを入れてね。」
とトンコ。
オレはここがベニズワイの直売をしていることを思い出し、
「ちょっと待って、カニを買ってくるよ。ええと辰治さんはカニ食べるかなあ?」
「へへへ、カニねえちょいとみそをなめて、熱いのをキューっとねえ。
へへっ、面目ねえ。」
「はいはい了解。」
「いいなあ二人とも。」
カニの食べられないトンコには少しかわいそうだったかな?
オレ達は道の駅を出発した。
続く
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by caymmi1 | 2008-03-07 15:42 | お話、小説

翌朝オレたちは朝早く国道1号線を走った。
大磯をすぎると相模湾の海がキラキラ光っている。
「わあ、あたしここ好き!」
トンコが走りながら言った。
「玉」の辰治さんは動かない。
夕べオレの自宅で夜遅くまでマンボだのタンゴだのサルサなんかを
聴いていてずっと跳ね回っていた。だから寝ているのだろう。
やがてオレ達は小田原市内を過ぎ、小田急の湯本駅を過ぎ、
峠道に入った。
「結構きついからなトンコ、頑張れよ。」
「OK、大丈夫」
とATはスポーツモードのランプがつき、エンジンの回転数が上がった。
カーブの手前で黄色いランボルギーニが追い越していった。
「くやしーい」とトンコ。
「しかたないよ相手が悪い」
「でもけっこう楽しい!」
トンコはけっこう飛ばしやなのかな?
乙女峠を抜けると間もなく富士山がその巨大な姿を表し、
御殿場市に入る。
オレ達は手早く仕事を済まし、芦ノ湖へ向かった。
「おうおう芦ノ湖だ!何年ぶりかねえ。」
オレ達は箱根神社に車を停めた。
辰治さんを湖面に近い鳥居まで連れていく。
「ここから湖に放り込んでくだせえ。」
と辰治さんが言うので、オレはおそるおそる「玉」を湖面に投げ入れた。
するとたちまち龍の姿になり、
「これから九頭竜神社に兄貴にあってきまさあ。ちょいと待ってておくんない。」
九頭竜神社は箱根神社とは少し離れたところに社殿があり、参拝客は
普通は船で行く。
少しすると辰治さんが戻って来た。
「兄貴に会いにいったんですがね、義理の姉さんが出て来て、
兄貴は龍神様といっしょに福井の九頭竜湖に西洋の龍を退治に行ったてんでさあ。
そしたらおまいさんも行っとくれてんでさあ。」
「福井?あの北陸の?」
「そこでひとつ相談なんですがねえ。一緒に福井にいっちゃあくれませんかい?」
「あたし行く!おもしろそう。」
「うーんのりかかった船だ。行こうか。」
「ありがてえ。だけどざんねんだなあ。湯に入りそびれた。」
「あれ?福井にはたくさん温泉があるよ。芦原温泉とか。」
「そいつはありがてえ。」
「それじゃあ行こうか?」
「まって。あたし富士山がもっと見たい。」
トンコは富士山が好きなようだ。オレ達は富士の見える場所に移動し、少し休憩
してから帰路についた。
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by caymmi1 | 2008-03-01 19:06 | お話、小説

ブラジル音楽中心の雑感
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