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トンコとおれの冒険 第一話 箱根

翌朝オレたちは朝早く国道1号線を走った。
大磯をすぎると相模湾の海がキラキラ光っている。
「わあ、あたしここ好き!」
トンコが走りながら言った。
「玉」の辰治さんは動かない。
夕べオレの自宅で夜遅くまでマンボだのタンゴだのサルサなんかを
聴いていてずっと跳ね回っていた。だから寝ているのだろう。
やがてオレ達は小田原市内を過ぎ、小田急の湯本駅を過ぎ、
峠道に入った。
「結構きついからなトンコ、頑張れよ。」
「OK、大丈夫」
とATはスポーツモードのランプがつき、エンジンの回転数が上がった。
カーブの手前で黄色いランボルギーニが追い越していった。
「くやしーい」とトンコ。
「しかたないよ相手が悪い」
「でもけっこう楽しい!」
トンコはけっこう飛ばしやなのかな?
乙女峠を抜けると間もなく富士山がその巨大な姿を表し、
御殿場市に入る。
オレ達は手早く仕事を済まし、芦ノ湖へ向かった。
「おうおう芦ノ湖だ!何年ぶりかねえ。」
オレ達は箱根神社に車を停めた。
辰治さんを湖面に近い鳥居まで連れていく。
「ここから湖に放り込んでくだせえ。」
と辰治さんが言うので、オレはおそるおそる「玉」を湖面に投げ入れた。
するとたちまち龍の姿になり、
「これから九頭竜神社に兄貴にあってきまさあ。ちょいと待ってておくんない。」
九頭竜神社は箱根神社とは少し離れたところに社殿があり、参拝客は
普通は船で行く。
少しすると辰治さんが戻って来た。
「兄貴に会いにいったんですがね、義理の姉さんが出て来て、
兄貴は龍神様といっしょに福井の九頭竜湖に西洋の龍を退治に行ったてんでさあ。
そしたらおまいさんも行っとくれてんでさあ。」
「福井?あの北陸の?」
「そこでひとつ相談なんですがねえ。一緒に福井にいっちゃあくれませんかい?」
「あたし行く!おもしろそう。」
「うーんのりかかった船だ。行こうか。」
「ありがてえ。だけどざんねんだなあ。湯に入りそびれた。」
「あれ?福井にはたくさん温泉があるよ。芦原温泉とか。」
「そいつはありがてえ。」
「それじゃあ行こうか?」
「まって。あたし富士山がもっと見たい。」
トンコは富士山が好きなようだ。オレ達は富士の見える場所に移動し、少し休憩
してから帰路についた。

by caymmi1 | 2008-03-01 19:06 | お話、小説  

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