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トンコとおれの冒険 第一話 トンコの秘密 続

オレは我にかえってふと時計を見た。いけない仕事をしなきゃあ。
「トンコ、辰治さん、出発するよ。仕事をかたずけなきゃあ。」
「うん、わかった!」とトンコ。
「あいよ。」と辰治さんが続いた。
得意先にいって、仕事を片付けると、会社に電話をし、
箱根方面の仕事がないか問い合わせた。
すると「カチョー」さんが、
「康介クン、明日、御殿場方面で一件あるわね。早い時間の約束なので、
今日はもう帰っていいわ。明日、直接回ってちょうだいね。」
と珍しくありがたいことを言う。
自宅へ向かって走っていると、辰治さんが、
「ちょいと頼みがあるんだが、なにか気の利いた音楽をかけちゃあくれねえかい?」
「辰治さんはどんなものを聴くの?」
「あ~う!ってやつよ、よく手品師が伴奏に使う。」
「ひょっとしてこれかな?」
オレは音楽プレーヤーをカーオーディオにつなぎ、ペレスプラードの
マンボNo5をかけた。
「いよっ、これだよこれ。」
「玉」は空中でくるくる回ったりしている。
「辰治さんはマンボが好きなんだね?」
「おうよ、昔おっかあと良く雲の上で踊っていたんだよなあ、ただね
下界はピカピカゴロゴロ雨ザアザアって訳よ。親父に大目玉をくらってな。」
「辰治さん、けっこう不良だったんだ。」
「若気の至りって訳よ。」
するとトンコが、
「辰治さん、恋愛結婚だったんだ。いいなあ。」
「いやあ、そんなもんじゃあねえって。」と「玉」はそこいらを跳ね回っている。
「あたし、もう恋愛なんかできないんだもん。」
オレはトンコがかわいそうになってきた。トンコには女の子らしいことを
させてあげたい。
「あきらめないでさ、きっとなにか方法はあるさ。」
「おうそうだ、あっしが箱根にいきてえっていったのは、箱根には
あっしの兄貴がいるんでさあ。その兄貴にね力を借りようと思ってね。
それとへへっ、久しぶりに温泉につかりてえ。」
「なあんだ、辰治さんの目的はそれだったのか。」
オレは思わずふきだしながら言った。
続く

by caymmi1 | 2008-02-28 21:33 | お話、小説  

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